雨が降り出してきた
この時期の雨は、とても冷たく感じる
風の具合と空の色でしばらくしたら止みそうな気がしたから
目に入った、ぼろぼろのお屋敷で雨宿りをすることにした
誰かが咳をする音がして、奥を覗いてみたら
ヨハンさんっていう若い画家の男の人とであった
ヨハンさんは、この家の方らしい
でも、ご病気のようなのにずっと飲まず食わずで絵を描いているようだった
ちいさいころに夢で見た天使を絵に描きたくてがんばっているみたいだ
ヨハンさんは、わたしにモデルになってほしいと言ってくれた
わたしは、ひとつ条件を出してモデルを引き受けた
その条件とは「これを最後の作品にするなんて思わないこと」
なんだか、お話していて感じたのだけれども、ヨハンさんはこの絵さえかけたら自分なんて死んでいい
……そんなふうに、思ってるように感じたから
椅子に座ってモデルになっていたら
不思議なことに、いきなり回りが真っ暗になった
…ううん、真っ暗というのはちょっと違う
まるで星空に浮かんでいるみたいに、周りにきらきら小さな光が浮いていた
体がいきなり軽くなったと思ったら、…うん、びっくりしたことに、わたしの背中に羽が生えていたんだ
信じられない?
うん、わたしも…今でも夢だったんじゃないかって思うくらい
星空を飛んでいる間に七色の泉と小さな大地をみつけてそこへ下りていった
そこには、さっきよりもずっと健康そうなヨハンさんが待っていた
どうやら、そこはヨハンさんが描いた絵の中で、ヨハンさんはそこにわたしと自分の魂を閉じ込めたみたいだった
夢で見た天使の絵を描きたくて、がんばってがんばって
そして、最終的に考え付いたのがこの方法だったのですって
ヨハンさんは、わたしに天使を望んだけれど、でもわたしは天使にはなれなかった
体をおいてきたから、きっと健康なんだろうヨハンさんに、わたしはとっても残酷なことを望んでしまった
それは、生きようとすること
また、明日を迎えて、明後日を迎えること
苦しくても、辛くても、生きてる人っていうのはそういうものを手放してはいけないって思った
これができれば、人生をここでおしまいで良い、引きこもって世界を閉じてしまおう
そう、思わないでほしいなって思ってしまった
上手く言えるか、わからないけれども
ヨハンさんの、魂を閉じ込めた絵の中には、未来がなかった
わたしは、未来が無いのは嫌だし、ヨハンさんにも未来が無いというのは嫌だった
負けないでほしいって、言ってしまった
ヨハンさんは、わたしと約束をした
夜に咳の発作が出てきたら苦しいから、お見舞いにきて傍に居てくれって
そうしたら、きちんと病院にいくからって
気が付いたら、わたしはモデルになったときと同じように椅子に座っていた
でも、キャンバスの向こう側に居たヨハンさんは倒れていた
慌てて駆け寄ったときには、とても苦しそうに体を丸めていた
何度も、何度も咳をして、血を吐いた
手を握っていたけれど、祈ったけれど、ヨハンさんは一緒に病院へゆけなかった
………うん、わたしは自分が思ったことが間違いとは思わない
いまでも、それは思っていない
でも、ヨハンさんに、とても酷いことを望んでしまったんだろうと思った
苦しみへ引き戻して、最後に命をかけてやりたかったことを手放させた
せめて、天使だったらよかったのになあなんて、仕様の無いことも考えてしまう
いっぱい泣いた
【朽ち果てた屋敷:青年画家】
涙もろい性分なのか、本当にめそめそないててびっくりした
ありがたくて、申し訳なくて
こんなにおろおろしてるの、自分だけじゃないかと泣いた後思ってしまった
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